morizo さんより,RAE Systems GammaRAE II をお借りすることができました.
ありがとうございます.
お借りした GammaRAE II の使用感などをまとめてみました.
RAE Systems GammaRAE II について
現在販売されているものは,GammaRAE II R という型番で,お借りしたのは1世代前の機種になります.
R 付きの機種に比べ,エネルギー補正PINダイオードが無い代わりに,電池のもちが800時間と長くなっています.
GammaRAE II はCsIシンチレーション検出器を使用した放射線測定器(ガイガーカウンター)です.
特徴としては,
- 高感度
- Cs137で6000cpm/μSv/hの感度があります.
20万円以下の機種では最も高い感度になるかと思います.
ただし,エネルギー補償はないようです. - 小型&丈夫
- 単3電池2本で800時間動作します.
IP67 ですので, 防水規格 IP表記に詳しく記載がありますが,
耐塵形(粉塵が内部に侵入しない)&水中への浸漬に対する保護(規定の圧力,時間で水中の浸漬しても有害な影響を受けない)
というレベルになります.
マニュアルではIP65とあるのですが,最新のデータシートではIP67となっており,後からIP67準拠であることを確認されたようです. - 強力なデータログ機能&PC連携可能
- PCから,線量率の推移を確認することが可能です.
最短1秒間隔で,30000ポイントものログを記録できます.
カタログスペック上は30000ポイントですが,実際は6万ポイントくらい保存できるようです. 1秒間隔で保存しても,長時間記録できます.
内容物
届いたものは次の写真のようなものです.
本体と,マニュアル(初期バージョンと,ファームアップで追加された機能の追加マニュアル),ユーザ登録はがき(?),校正証明書,があります.
CD-Rは関連ソフトウェアをmirozoさんが焼いて用意して頂いたものです.
液晶はドットマトリクスタイプで,左側に現在の表示内容,上には各種のアイコンが出るようになっています.
表と裏はこんな感じです.
表側には左右に2つのボタンが付いています.真ん中の金色の部分はスピーカーです.(かなり大音量)
裏側に金属のクリップが付いています.
クリップは結構厚みがあります.
ただ挟むタイプではなくて,いったん金属の部分を開くと,ギザギザの歯が開きます.
付けたい場所につけてから,金属の部分を閉じると,ガッチリ挟むような形です.
作業服などには良いですが,鞄などに付ける場合は,鞄側に傷が付くかもしれません.
過酷な環境でも外れないように,しっかりしたクリップとなっているようです.
クリップは取り外し可能ですので,日常生活で使う場合は取り外して鞄等にいれる方が便利かもしれません.
クリップを取り外すと次の写真のような感じです.
出っ張りが無くなるので鞄などに入れやすくなります.
大きさ
大きさはこのくらいで,鞄などにも入れやすい小型サイズです.
クリップがかなり出っ張っているので,ちょっと厚さがあるように見えますが, 本体自体はそんなに厚くありません.
他の測定器と比べるとこのような感じです.
PM1703MA より少し大きく,PA-1000 Radi くらいのサイズです.
画面表示
画面表示は以下のようになります.
これが通常の画面です.
SETボタンでcpsとμSv/hの表示を切り替えられます.
MODEボタンを押す毎に,モードが変わります.
画面左に常にモード表示がされるので,どのモードかはすぐに把握できます.
次の3つは,バックグラウンドの更新画面と,ピーク値,最小値の表示です.
バックグラウンドのモードは,アラーム(後述)がサーチモードの場合のみ表示されます.
バックグラウンドの画面でSETボタンを押すと,アラームを出す基準のバックグラウンド線量を再測定できます.
化学の可溶物質を浸出させるとは何か
次の2つは,積算線量と日時の表示です.
日時の表示の一番下は,電源を入れてからの経過時間で,時:分 の形式です.
次の2つは,電池残量・温度,PC通信のモードです.
電池残量は電圧が出ていますが,morizoさんによると2.5Vくらいが交換の目安だそうです.
上下反転
SETボタン長押しで上下を反転させることができます.
クリップを使いベルトなどに付けているときは,反転させた方が見やすいかもしれません.
画面の反転は,電源OFF/ONでリセットされるようです.
設定変更
MODEボタンとSETボタンを3秒ほど同時に押すと,プログラミングモード(設定モード)になります.
この画面で,Alarm Set(アラームモードと閾値の設定),Datalog Set(ログ記録の設定), Monitor Set(バックライト,バイブ・音のON/OFF設定,単位設定,日付・時刻設定)ができます.
電源ON後の様子
電源ON後の様子を撮影しました.
アラームをサーチモードにしている場合,バックグラウンド線量の測定に30秒ちょっとかかりますが, セルフチェックなどは比較的短い時間で完了します.
動画はサーチモードの場合ですが,アラームをセーフモードに設定した場合は, バックグラウンドの測定処理自体が行われませんので,もっと短時間で起動します.
汚染探索・線量率の測定
線量率のロジックは不明ですが,数値の安定表示よりは,反応速度を重視した作りになっているようです.
数値の上昇・下降どちらでも,素早く変化します.
小数点以下第2位までの表示ということもあって,素早いといっても表示された数値は結構安定しています.
ただし,1時間に5回程度,数値がふらつくことがあります.(詳細は後述)
cpsとμSv/hの表示を切り替えられますが,1cps=0.01μSv/hで換算されているようですので, どちらで使っても違いはないようです.
アラームは表示にかかわらず動作しますし,ログには常にμSv/hで記録されます.
汚染探索をする場合,基本的には画面を見ながら数値が高くなるポイントを探す形になります.
アラームは1段階または2段階で,線量率の上昇につれてアラームが変わる(バイブや音の間隔が短くなる等)動作はしないようです.
アラーム機能
アラームは2種類のモードがあり,サーチモードとセーフモードがあります.
サーチモードの場合,バックグラウンド線量に比べてある程度線量率が高くなると,アラームが鳴ります.
どの程度高くなったらなるようにするかは,設定で変更することが出来ます.
このモードでは,アラームは1段階になります.
セーフモードの場合は,アラームを鳴らす線量率をcpsで設定します.
1段階目・2段階目で画面のアイコン表示が変わり,ブザーの鳴り方・ランプの点灯の仕方も変わります.
1段階目ではピッ・ピッという感じで,2段階目ではピピッ・ピピッという感じのアラームになります.
ただし,バイブレーションについては1段階の動作です.
測定値の比較・自己ノイズ
測定値の実際の値の比較は別ページにまとめていますので,そちらを参照してください.
参考:放射線測定器・ガイガーカウンターの測定値比較
エネルギー補償が無いのが欠点ですが,通常のバックグラウンド線量では他機種と大きな違いはありません.
データ数が多くないので確かなことは言えませんが,感触としては PA-1000 Radi と同等くらい,PM1703MA よりちょっとだけ低めの線量率を表示するような印象です.
また,自己ノイズについても測定してみました.
鉛容器の中にいれたところ,0.00μSv/hとなりました.
反応速度
放射線源を近づけて反応速度を撮影しました.
動画はいずれもアラームモードをサーチモードに設定しています.
(バックグラウンド線量よりある程度高くなったらアラームが鳴るモード)
最初の動画はcpsモードでの反応です.
最初にセシウム線源のみ,その後複数の線源を近づけています.
どのような比重茶色のエビが住んでいない
次に,Sv/h表示での反応速度の様子です.
表示の違いだけで動作は同じようです.
PM1703MAとの比較
所有している Polimaster PM1703MA と並べて比較してみました.
同じくらいの価格帯で,カタログスペック上の感度が同じ機種です.
ただし,近づけているのは小さな線源のため,測定器の検出機との位置関係の微妙な違いが大きく影響してしまいます.
そのため,参考程度に見て下さい.
PM1703MA の方はアラームに段階がありますが,GammaRAE II は1段階となります.
また,線源を離したとき,ちょっと遅れてアラームが止まる印象です.
アラームはあくまで危険を知らせるためという位置づけのようで, 汚染場所の探索を想定していないのではないかと思います.
もし,測定器を移動させながら汚染場所を探したいという目的がある場合は, PM1703MA の方が使いやすそうです.
線量率の変化は,GammaRAE II の方が素直な印象です.
低線量で少し変化した場合,PM1703MA は,数値が上がるときは素早く,下がるときはゆっくり下がります.
一方,GammaRAE II は上昇・下降ともに素早く数値が変わるようです.
移動したときに数値を読み取るような場合には向いていると思いますし, 後述する線量率マップ向きと言えるロジックになっているようです.
測定値のふらつき
GammaRAE II は,時々数値がふらつくことがあります.
バックグラウンド線量の場合,一瞬2倍くらいの数値になったり,ゼロになったりします.
放射線はランダムに出てくるため,あまり検出できないタイミングや,逆にたくさん検出できるタイミングがあります.
反応速度を優先しているためか,そういう時に一瞬高い数値や低い数値を表示するようです.
バックグラウンド線量,0.3μSv/h,2.9μSv/h,14.4μSv/h の4つの線量率でしばらく測定を行い, その結果をグラフすると以下のようになりました.
黄色い線が実際のデータで,紫は10秒の移動平均です.
バックグラウンド線量の時は,数値が大きく出るときはだいたい2倍くらい,少ないときは0まで落ちています.
その他の線量では,やはり上下にふらつきますが,幅はある程度の範囲に収まり,0まで落ちることはないようです.
ぶれる頻度は1時間に数回くらいのようですが,14.4μSv/h前後の線量の時はかなり回数が少なくなっていました.
2.9μSv/hの時も最後の方はしばらくぶれが生じていませんでしたので,発生回数にもばらつきがあるようです.
この機種はログ記録が優れているので,線量率マップなどの作成に利用しやすいと思いますが, その場合はこういった瞬間的な上下の変動を取り除く必要がありそうです.
また,数値が一度ぶれた直後は,線量率が安定しません.
おそらく,過去の統計をリセットして,その時点から測定を再開するために, 直後は数値が揺らぎやすいのだと思います.
数値がふらついた後,線量率が少し安定しないのは線量率が高いときでも同じようです.
エネルギー特性
GammaRAE II はエネルギー補償がありませんので,エネルギーによって感度が大きく変わってきます.
マニュアルにはエネルギー特性の記載がありませんが,一般的に CsI の場合,低エネルギーは感度が高く, 高エネルギーは感度が低くなります.
複数の密封線源を近づけ,cpsとμSv/h表示を切り替えてみたところ,どの密封線源でも, 1cps=0.01μSv/h でぴったり一致しました.
このことから,エネルギー補償はされていないと言えそうです.
PCソフトウェア
GammaRAE II には,ProRAE Studio II というソフトウェアが付属します.
こちらを利用することで,本体に記録したログのダウンロードしたり,測定器の設定を変更することができます.
教えて何光合成
Windows7 64bit 環境で動作しましたが,Twitter上では64bitはダメとの意見もありました.
Bluetoothアダプタによってはうまくいかない等あるのかもしれません.
Bluetooth通信
通信は Bluetooth で行います.
ペアリングをする際にパスコードが不要なタイプのようで,Windows標準のBluetoothではうまく接続できません.
今回はお借りしたPlanexのBluetoothアダプタを使用しました.
ソフトウェアの使い方
起動すると,最初にユーザタイプの選択画面が出ます.
ここで,Basic User を選ぶと,測定器の設定確認だけで,線量率のログのダウンロードや設定変更が行えません.
Data Manager か Administorator を選び,右側のパスワード欄に「rae」を入力します.
起動後に,画面の Automatic detection のアイコン(虫眼鏡にA)をクリックすると, しばらくして測定器が一覧に表示されますので,選びます.
測定器と通信すると,次のような画面になります.
左側のSetupで設定の確認・変更,Datalogで線量率ログのダウンロードができます.
設定変更画面は次のような感じです.
各種設定を変更可能です.
線量率ログのダウンロードはこの画面で行います.
↓↓↓ のアイコンをクリックすると,測定器からログがダウンロードされます.
ダウンロード中はこんな感じの画面になります.
カタログスペックでは3万ポイントですが,実際は6万ポイント強が保存されているようです.
測定器からのダウンロードには,1分ちょっとかかります.
測定器からログをダウンロードすると,ログの一覧が表示されます.
1つのログは,最大3600ポイントのようで,3600ポイントに到達すると自動的に分割されるようです.
1秒毎に記録するように設定してあるため,1時間ごとにログが分割されています.
表計算のようなアイコンをクリックすると,詳細の数値を1つずつ確認できます.
グラフのアイコンをクリックすると,線量率の変化をグラフで確認できます.
線量率ログのフォーマット
線量率のログは次のような形式です.
ヘッダ部分はログ毎に付くので,export時に左側で複数を選んでエクスポートすると, ファイルの中に複数回ヘッダ部分が出てきます.
============================================================ 12/02/03 06:44 ************************************************************ Summary ------------------------------------------------------------ Unit Name GammaRAE II Unit SN 000-000000 Unit Firmware Ver V2.00A ------------------------------------------------------------ Running Mode Search Mode Measure Type Real Datalog Type Auto Diagnostic Mode No Stop Reason Event Full ------------------------------------------------------------ Begin 2012/02/03 06:44:07 End 2012/02/03 07:44:06 Sample Period(s) 1 Number of Records 3600 ------------------------------------------------------------ Sensor GAMMA(uSv/h) Background Value 0.06 Alarm Coefficient 5.0 Over Alarm 40.00 Calibration Time 2012/02/02 23:27 Peak 0.11 Min 0.00 Average 0.06 ************************************************************ Datalog Index Date/Time GAMMA(uSv/h)(Real) 001 2012/02/03 06:44:08 0.06 002 2012/02/03 06:44:09 0.06 003 2012/02/03 06:44:10 0.06 004 2012/02/03 06:44:11 0.06 (途中省略) 3596 2012/02/03 07:44:03 0.06 3597 2012/02/03 07:44:04 0.06 3598 2012/02/03 07:44:05 0.06 3599 2012/02/03 07:44:06 0.06 3600 2012/02/03 07:44:07 0.06 Peak 0.11 Min 0.00 Average 0.06 ************************************************************ TWA/STEL No enabled sensor supports TWA/STEL.
GPSロガー併用での線量率マップ作成
GammaRAE II で線量率のログを記録すると同時に,GPSロガーでGPSログを記録し, 後でそのログを付き合わせることで線量率マップを作ることが出来ます.
カメラ用に SONY GPS-CS3K を持っていたので, これをGPSロガーとして使ってマップ作成を行ってみました.
測定
GammaRAE II と GPSロガーを持ち歩きます.
今回は,五反田駅から大崎駅の方まで目黒側沿いに歩いた後,山手通りに五反田の方まで行き, クアアイナまで移動しました.
(余談ですが,クアアイナのハンバーガー美味しいです.ガッツリしているので肉好きの方にはお勧め)
測定前に,GammaRAE II と GPSロガーの時刻がぴったり一致していることを確認しておきましょう.
時刻設定は,ProRAE STUDIO で,PC側の時刻と同期できます.
後で時間のずれを指定して結合できれば…と思いましたが,そういう機能は無いようで, わたしは測定器のログを後で修正するハメになりました(^^;
また,GammaRAE II の時間はずれやすいようですので,測定前には毎回調整する方が良いようです.
ファイルの事前処理
GammaRAE2 は線量率のぶれるため,目視でファイルを見て, ぶれた直後の数秒のデータを削除しました.
ぶれても数秒程度なので,目視で大きくずれているところだけ取り除けば,問題なく使用できます.
ガチャコン
ガチャコンを使って,GammaRAE II のログと,GPS のログを結合します.
このツールについては,2chの【放射能】線量マップ作成手法確立プロジェクト3,のスレッドに最新の話題があります.
詳細は http://uni.2ch.net/test/read.cgi/radiation/1318065095/ を参照して下さい.
ソフトを起動し,GammaRAE II のファイルと,GPSログのファイルを順に読み込ませ,ガチャコンボタンでマージします.
その結果を保存します.
ガチャコンの画面はこんな感じです.
マップでの表示
手軽に確認できるように,7 Colors GoogleMap で出力しました.
下記サイトでマップ上に合成したり,それを保存して公開できます.
マップ上に表示した結果は以下のような感じです.
目黒側の北側をずっと歩いていたのですが,少し位置がずれて南の建物の方にずれ込んでしまっていますが, その他はだいたい正しい位置関係になっています.
目黒側沿いは高層ビルが多数あるので,GPSの精度が落ちてしまったのかもしれません.
五反田駅内と,クアアイナ到着後のログは線量率が下がっていますが,これは屋内だからと思います.
川沿い~大崎駅が若干低く,山手通りの方が線量率が少し高いような感じですね.
0.02μSv/h程度の違いなので,色で見るとかなり分かれますが,誤差の範囲かもしれません.(^^;
まとめ
GammaRAE II は,なんといっても強力なログ記録機能が特徴です.
20万円くらいの機種で,細かくログを記録できる測定器は他に無いと思います.
放射線の測定において,GPSロガーと共に持ち歩いて,線量率マップを作りたい,という需要はかなりあると思います.
ホットスポットなどの存在が確認されていますので,いろいろな場所の線量を一度に調べられると便利です.
GammaRAE II + GPSロガーで,既にツールも用意されているので,かなり簡単にマップ作成ができると思います.
線量計マップを作る時に使うガチャコンは,もともとはガイガーカウンターと連動する想定だったようですが, GM管タイプはγ線の感度が低いため,なかなか精度のあるマップは作りにくいと思います.
GammaRAE II は 6000cpm/μSv/hと高い感度があり,なおかつログ記録が充実していますので, 線量率マップ作成目的では,コストパフォーマンスが高い機種だと思います.
一方,汚染探索などに使う場合,アラームが1段階なのが少し弱点だと思います.
同価格帯で Polimaster PM1703MA と比較されることが多いと思いますが, こちらの機種は強力なログ記録機能と,積算線量が計れるのがメリットだと思います.
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